友人の話。
彼の育った山村には、一風変わった神社があった。
一見ごく小さな普通の社なのだが、おかしな言い伝えがあるのだと。
「御犬様が境内を散策される時、側に近よってはならない」
御犬様が一体どんな犬であるのかは、伝えられてはいないそうだが。
彼は小学生に入ったばかりの頃に、御犬様を見たことがあるという。
その日、いつものように社に遊びに行くと、大きな黒い犬が地面を嗅ぎ回っているのが遠目に見えた。
特別な犬だとは思わず近づいて行ったのだが、参道の途中で足が止まってしまう。
面を上げた犬の両目は、普通の犬の倍ほどもあったのだ。
あぁ、さてはこれが御犬様なんだな。
なぜかそう思えて、その場で足を返して帰ったのだという。
他にも御犬様を見た者は、何人かいたらしい。
人によって、その姿は少しずつ違っていた。
ある者は前足が異様に大きかったと言い、また別の者は尻尾が身体と同じくらいあったと言う。
どれもどこかしら真っ当な姿ではない。
しかし目撃者たちは皆、自分が見たものは御犬様に違いないと信じていたそうだ。
時たま里帰りした折に、親戚の子供達が“神社に出る奇形の犬”の話をしていることがある。
御犬様、いまだ御健在のようだね。そう言って彼は笑っていた。
<感想>
子供じゃなくても見えるのかな?






彼の育った山村には、一風変わった神社があった。
一見ごく小さな普通の社なのだが、おかしな言い伝えがあるのだと。
「御犬様が境内を散策される時、側に近よってはならない」
御犬様が一体どんな犬であるのかは、伝えられてはいないそうだが。
彼は小学生に入ったばかりの頃に、御犬様を見たことがあるという。
その日、いつものように社に遊びに行くと、大きな黒い犬が地面を嗅ぎ回っているのが遠目に見えた。
特別な犬だとは思わず近づいて行ったのだが、参道の途中で足が止まってしまう。
面を上げた犬の両目は、普通の犬の倍ほどもあったのだ。
あぁ、さてはこれが御犬様なんだな。
なぜかそう思えて、その場で足を返して帰ったのだという。
他にも御犬様を見た者は、何人かいたらしい。
人によって、その姿は少しずつ違っていた。
ある者は前足が異様に大きかったと言い、また別の者は尻尾が身体と同じくらいあったと言う。
どれもどこかしら真っ当な姿ではない。
しかし目撃者たちは皆、自分が見たものは御犬様に違いないと信じていたそうだ。
時たま里帰りした折に、親戚の子供達が“神社に出る奇形の犬”の話をしていることがある。
御犬様、いまだ御健在のようだね。そう言って彼は笑っていた。
<感想>
子供じゃなくても見えるのかな?



知り合いの話。
彼のお祖父さんによると、ある山奥に老人ばかり集まる場所があるのだという。
最寄りの駐車場より小一時間ほど歩いた斜面にあるその場所は、
林の中にぽっかりと開いた小さな広場になっている。
中心に松の切り株が八つばかりあるだけで、他に見るものは何もない。
だのに、いつ訪れてみても幾名かの老人がそこにいる。
老人たちの間で囁かれている噂がある。
切り株を一つ選んで腰掛けると、病が治り心身の調子が良くなるのだと。
どんな難病にでも効能があると言われ、それに縋る者も多いのだと。
ただ、切り株が効果を顕すのは、人生に置いて一度だけ。
それに加えて、切り株の中には外れが一つだけあり、
それに座ると逆に具合が悪くなって死ぬとも言われている。
人によって切り株の当たり外れが違うため、他人の選択は参考にならない。
お祖父さんはこれまでに二度、そこを訪れているという。
持病に悩まされていた所為だが、結局二度とも座れなかった。
「何ていうか、一つを選ぶ勇気が出なくて」
そう言って苦笑していたそうだ。
<感想>
私もこういうのは苦手なので、はずれを引くと思います。
ダイナマイトの赤と青のどちらの線を切るかというシーンに出くわしても、
絶対はずす!(笑)






彼のお祖父さんによると、ある山奥に老人ばかり集まる場所があるのだという。
最寄りの駐車場より小一時間ほど歩いた斜面にあるその場所は、
林の中にぽっかりと開いた小さな広場になっている。
中心に松の切り株が八つばかりあるだけで、他に見るものは何もない。
だのに、いつ訪れてみても幾名かの老人がそこにいる。
老人たちの間で囁かれている噂がある。
切り株を一つ選んで腰掛けると、病が治り心身の調子が良くなるのだと。
どんな難病にでも効能があると言われ、それに縋る者も多いのだと。
ただ、切り株が効果を顕すのは、人生に置いて一度だけ。
それに加えて、切り株の中には外れが一つだけあり、
それに座ると逆に具合が悪くなって死ぬとも言われている。
人によって切り株の当たり外れが違うため、他人の選択は参考にならない。
お祖父さんはこれまでに二度、そこを訪れているという。
持病に悩まされていた所為だが、結局二度とも座れなかった。
「何ていうか、一つを選ぶ勇気が出なくて」
そう言って苦笑していたそうだ。
<感想>
私もこういうのは苦手なので、はずれを引くと思います。
ダイナマイトの赤と青のどちらの線を切るかというシーンに出くわしても、
絶対はずす!(笑)



母は若い頃和裁をやっていました。
私が通学していた中学校は、
なぜか秋の体育祭の時に女子が浴衣を着て地元の民謡を踊る、というのが恒例になっていて、
私はどうせなら自分で縫った浴衣で踊りたいと思い、母に教わりながら浴衣を縫い始めました。
その日、片方の袖を身頃に縫いつけて、
疲れたのでもう片方の袖は明日身頃に縫い付けることにして針をしまおうとすると、母が言いました。
「片方の袖を付けたら、必ず同じ日にもう片方の袖も付けてから寝なさい。
そうしないと、なぜ片方の袖のまま放っておくんだと着物がやって来るから」
…着物が恨みがましくやって来ると…?はぃ?お母さん、それはギャグですか?
笑う私に母は青ざめた顔で言ってくれました。
「昔、和裁を習っていた先生が、寝ている時に恐い目にあったと言って…。
お母さんも信じてなかったから、一度片方の袖を付けたままで寝たら…」
母、沈黙。
しょうがないので眠い目をこすって両袖を身頃に付けてから寝ました。
普段、滅多な事で驚いたり恐がったりしない母の怯えた顔が恐かった。
<感想>
半分だけだと、
ちゃんと仕上げてくれるのかと不安になるのかもしれませんね。






私が通学していた中学校は、
なぜか秋の体育祭の時に女子が浴衣を着て地元の民謡を踊る、というのが恒例になっていて、
私はどうせなら自分で縫った浴衣で踊りたいと思い、母に教わりながら浴衣を縫い始めました。
その日、片方の袖を身頃に縫いつけて、
疲れたのでもう片方の袖は明日身頃に縫い付けることにして針をしまおうとすると、母が言いました。
「片方の袖を付けたら、必ず同じ日にもう片方の袖も付けてから寝なさい。
そうしないと、なぜ片方の袖のまま放っておくんだと着物がやって来るから」
…着物が恨みがましくやって来ると…?はぃ?お母さん、それはギャグですか?
笑う私に母は青ざめた顔で言ってくれました。
「昔、和裁を習っていた先生が、寝ている時に恐い目にあったと言って…。
お母さんも信じてなかったから、一度片方の袖を付けたままで寝たら…」
母、沈黙。
しょうがないので眠い目をこすって両袖を身頃に付けてから寝ました。
普段、滅多な事で驚いたり恐がったりしない母の怯えた顔が恐かった。
<感想>
半分だけだと、
ちゃんと仕上げてくれるのかと不安になるのかもしれませんね。



ある日、海外勤務していた友人から至急の電話があった。日曜の明け方、シンガポールからだったか。
寝ぼけ眼で受話器を取ると、
『社宅のトランクルームに私物を預けてあるんだが、それを取って来てもらえないだろうか』
挨拶もそこそこに友人は切り出した。
『管理人に話は通してあるから、悪いが今日中に取りに行ってくれないか』
切羽詰った様子は受話器の向こうからも感じ取れた。
『黒い蓋つきのビニールケースなんだ。それがすぐ必要なんだ』
友人のたっての頼み。こちらにも断る理由がなく、勢いで受けてしまった。
寝ぼけ眼で受話器を取ると、
『社宅のトランクルームに私物を預けてあるんだが、それを取って来てもらえないだろうか』
挨拶もそこそこに友人は切り出した。
『管理人に話は通してあるから、悪いが今日中に取りに行ってくれないか』
切羽詰った様子は受話器の向こうからも感じ取れた。
『黒い蓋つきのビニールケースなんだ。それがすぐ必要なんだ』
友人のたっての頼み。こちらにも断る理由がなく、勢いで受けてしまった。
5年位前の話。
母方の親戚が墓を建て直した。
立派な墓が出来たので、家族全員で墓の前で写真を撮ったそうだ。
その時、長男が写真を撮ったんで写真には写ってないはずが、
現像してみると、墓石にカメラを構えた長男が写っていた。
墓があまりにピカピカだったので、撮っている人が鏡に映ったようになっていたんだと思う。
それは普通にあってもおかしくない話なんだが、
その後暫くして、写真を撮った長男が事故で亡くなった。
建てたばかりの墓に、一番最初に入った事になる。
後でその事を墓石屋に話したら、「その写真を現像した時に話して欲しかった」と言われたそうだ。
何でも、墓に写って写真に撮られた時はお払いしないと、そのまま写っている人が墓に入ってしまう事になるんだと。
墓が新しい場合、入る人を待っているんだそうだ。
新しい家とかアパートに入った時とかに、その家(部屋)に自分の先祖を祭らないと、
家(部屋)が仏を欲しがるから、新しい家を建てると身近に誰かが死ぬらしい。
実際、俺の知ってる範囲でも、家を新しくすると家族に一人死人が出てるし。
それはそれで保険が降りて良い様な気もするが。
<感想>
人が映るほどピカピカの墓ってどんなのだろう?






母方の親戚が墓を建て直した。
立派な墓が出来たので、家族全員で墓の前で写真を撮ったそうだ。
その時、長男が写真を撮ったんで写真には写ってないはずが、
現像してみると、墓石にカメラを構えた長男が写っていた。
墓があまりにピカピカだったので、撮っている人が鏡に映ったようになっていたんだと思う。
それは普通にあってもおかしくない話なんだが、
その後暫くして、写真を撮った長男が事故で亡くなった。
建てたばかりの墓に、一番最初に入った事になる。
後でその事を墓石屋に話したら、「その写真を現像した時に話して欲しかった」と言われたそうだ。
何でも、墓に写って写真に撮られた時はお払いしないと、そのまま写っている人が墓に入ってしまう事になるんだと。
墓が新しい場合、入る人を待っているんだそうだ。
新しい家とかアパートに入った時とかに、その家(部屋)に自分の先祖を祭らないと、
家(部屋)が仏を欲しがるから、新しい家を建てると身近に誰かが死ぬらしい。
実際、俺の知ってる範囲でも、家を新しくすると家族に一人死人が出てるし。
それはそれで保険が降りて良い様な気もするが。
<感想>
人が映るほどピカピカの墓ってどんなのだろう?


